しわの美学について

 

 

上記は、「本を読むマグダラのマリア」 ロヒール・バン・デル・ウェイデン(左)と「受胎告知」レオナルド・ダ・ビンチ(右)の絵画です。これら、ルネッサンス期の絵画は、衣服のひだやしわの様子が美しく写実的に描かれたものが多いと言われています。

 

現代では、[しわ」というとネガティブなイメージしかありませんが、このように美しい「しわ」というのもあるのです。どちらかというと「しわ」というよりドレープと言った方がいいかも知れません。

 

ドレープとは、衣類などを優雅に纏わせるという意味で、ゆったりとしたひだを入れること。自然にできた布のたるみは、シルエットをより優美に見せることができ、エレガントなドレスなどに用いれられる。(Fashion Pressより)

 

同じ「しわ」でも、先日UPしたスキニーパンツの股付け根付近に出る引かれ皺と、上記のひだorしわは、全く違います。いったい何が違うのでしょうか?絵画の中の「しわ」は美しいけれど、スキニーパンツの引かれ皺は美しくない。

 

スキニーパンツの引かれ皺は、身体とそれを覆う布地とのミスマッチ。両者間の不具合は、確実に、身体にストレスを与えます。しかし、絵画の中のひだ or しわは、たっぷりとした布地の分量感が美しく、布地本来の特徴を如実に表しており、その様からは

身体へのストレスは微塵も感じられません。ストレスなく布地が身体を覆っている状態が作られていると言えます。

 

それは必ずしも、ゆとりの多いルーズな服が良いという意味ではなく、フィットした服においても同じで、身体と布地との距離感、その両者のバランスをどうとるか。皮膚のように人の動きに添ってくれる衣服設計こそが、両者の美しさを引き立てます。バランスがとれてストレスがないものは美しいと思うのです。

 

 

 

 

こちらは、ダ・ビンチの「衣紋習作」と名付けられた、衣皺(いしゅう)のデッサンです。ルネサンス期、美しい衣紋を描く事は画家の力量を示すものでした。この絵は、修業中の20歳前後のダ・ヴィンチが描いたもので、漆喰にひたした布を人体模型に着せて描いたと言われています。非常に美しいですね。

 

                                                        (衣服の幾何学 篠原昭 著 参照)